ブラジャーの基礎 25

 世界では今、色々な大事が結構起こっています。
 最近はことに多いような気がしている筆者ですが、非常に保守的で新規性がないと捉えられてきた下着業界も最近になってあちらこちらに将来が楽しみな小さな芽が出てきたような・・


 今回は皮膚の「栄養貯蔵器官としての機能」と「体温調節器官としての機能」についての話です。前回で「皮膚は真の人体個体の包装紙」と言う話をし、一部の方には反発を受けましたがその続きです。

 皮膚が人体表面を覆っているというのは間違いないのですが、そうだったらとてもソフトな皮膚の表面としての形状は、その内部(体内)の構造状態をそのまま表しているはずです。
 下に掲示した模式図1のように、骨は人体の中で一番硬いものですから骨が表面に近いところでは骨の形をほぼそのまま皮膚が表しているはずだし、その次に硬い筋肉部はその筋肉の形に皮膚が盛り上がって表出しているはずです。

皮膚表面状態の模式図1

 骨の例では手首や足首に見られる骨の突起部などはその例で、皮膚がそこで丸く膨らんでいるのが分かります。そしてこれらは人体計測の計測点として大切なポイントになっています。
 また筋肉の例では、腕っ節がいかに強いかを誇示するときの上腕の力こぶの隆起や、ボディビルダーの人の胸筋の盛り上がりなどが挙げられるでしょう。

 これらはどちらも体内の硬い部位の姿を表出させて山状に盛り上がっておりますし、それらの部位間の隙間や谷間は皮膚によって滑らかに埋められ、全体として流れるような曲面を形成することになります。
 内部に硬いものがあれば出っ張り、無ければ自然に谷間を埋めて行くという現象は、それを覆うとても柔軟性のある皮(皮膚)のきわめて自然な事ですが一方で、人間は他の哺乳類に比べても体毛の少なさが特徴的です。自然界の厳しさから体内を守るために脂肪層という、厚みがあって柔らかく、熱伝導率の低い防御服を着込んで防御しているのでしょう。そのために食物から摂った栄養素を皮膚下に組織として貯めこんでおり、食物がとれない場合などはその脂肪層から必要な栄養を補給する仕組みです。

 まとめてみると、表面から見た皮膚の形状というものは、硬い骨と筋肉、そして所々に存在する脂肪層の塊の影響を受けながら全体として滑らかな曲面を構成していると考えられましょう。下の模式図2のような状態です。

皮膚表面状態の模式図2

 さてここで、もう一度前回のブログで掲示した皮膚構造図を見てください。バストの位置には特に突出した骨も筋肉も無いことが分かりますよね。
 つまりバストの隆起というものは骨の隆起でも筋肉の隆起でもない、脂肪層の塊に他ならないと言うことなのです。そしてそのことがブラジャー衣料の存在と性格に大きな影響を及ぼし、ひいてはブラジャーのパターンメーキングに影響を与えていると言うことになります。


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           Maison de LINGERIE La CeRES


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ブラジャーの基礎 24

4月も後半になり、だいぶ暖かくなってきましたね。
毎年桜の季節はちょうど満開の前後に強い雨風の日があってすぐに散ってしまうことが多いように感じていましたが、今年はかなり長い間観賞させてもらったような・・
  皮膚は包装紙  図の出典「被服のための人間因子」間壁治子先生著

 本題に入って皮膚とブラジャーの関係ですが、前回でその概要をご説明した皮膚の特性の項目順に思うところを書いて行き体と思います。

 まず「1.内部を保護する被膜としての機能」という点です。
 人体というものは本当に不思議なもので、動物としての本体は骨とそれを動かす筋肉、そして生命を司る臓器類が主体である生き物なのでしょうが、実際われわれが日常の社会生活において認識している「人間」というものはそれらを覆う皮、つまり皮膚なのだということになるでしょう。
 例えば、向こうから歩いてくる人はずいぶん素敵な人だなぁと思った時も、見ているのは「人間」ではなくそれを覆った皮、皮膚だということでしょうし、サイズの合ったブラジャーを買うためにアンダーバスト長を測りましょうと言ったって、測っているのは実際の人間個体と言うよりも「皮で包装された」人間なのです。

 ただいくら「皮膚は人間の包装紙に過ぎない」と力説したところで衣服を設計するには皮膚しか見ることが出来ないし、真の動物人間の実体では無いにしろ、皮膚をその「代理人」と見るしか人というものを捉える方法がありません。

 かくして私たちは包装皮であり代理人である皮膚を「人間の実体」と仮に看做して、表面の長さを測ったり、その寸法で原型を作ったり、運動を研究したりすることになっているのです。


   春!新しい創作を
  La CeRES

ブラジャーの基礎 23

 今回からは私たちの体表を覆う「皮膚」の話です。ブラジャーと皮膚とはなかなか直接に結びつきにくいようですが皮膚の状態、働きを見て行くとその関係が深い事が分かって来ます。
  皮膚の断面図


 いつも引用させて頂いている間壁治子先生著「被服のための人間因子」によれば、皮膚の機能は次のような点が列挙されています。今回はスタートとして若干のブラジャーとの関連性を付記してみました。上図も同書から引用させて頂きました。


 その「皮膚の機能」ですが

1. 内部を保護する被膜としての機能・・言うまでも無くこれまでの回で記述した骨、骨格や筋肉などが剥き出しでは生存が適いません。またこのブログでは除外していますが生命として大切な臓器関係も体内には保持されていますから、これらすべての重要な器官を包み保護する必要があります。そしてその上にブラジャーなど被服と言うものが、さらに皮膚の保護をする被膜となっています。

2. 栄養貯蔵器官としての機能・・皮下脂肪を蓄え、必要に応じて役立てると言う機能です。ブラジャーには余り関係がなさそうですがその応用形としてのバストについて考えているのですから一番の関連項目とも言えるかも知れません。
  つまり、バストというものも皮膚の一つの形態と捉えられることです。そのために今回挙げている皮膚の機能のそれぞれがバストにも同様に当てはまるのだと言うことは常に認識していなければなりません。

3. 体温調節器官としての機能・・皮膚は断熱材とも考えることが出来、定温動物である人間の体内温度を保つべく機能しています。外界の温度が高くなれば熱を遮断して内部に伝わりにくくし、低くなれば体温が逃げてゆかないように機能します。従って体温は常に一定ですが皮膚温は環境により上下しているはずです。

4. 分泌、排泄器官としての機能・・まず想起されるのは汗でしょう。汗は上項の体温調節のためにも機能し、定温化に欠かせないものです。汗と衣服との関係は良く言われるように汗を吸い、逃がす機能が衣服には求められます。ことにブラジャーを含む下着衣料では皮膚に直接接していると言う状況から、その要求度は高いと言わなければなりません。
   その他、分泌、排泄に伴う汚れなども下着類には深く関係し、そのために衣服として耐久度が求められると言うことになります。

5. 感覚器官としての機能・・皮膚下には神経が張り巡らされて感覚(触覚、痛覚、冷温感など)が感じられます。下着の多くは皮膚との間にゆとり分を設けず、どちらかと言うとマイナスのゆとりで設計する関係でこの感覚機能との付き合いが必定になっています。皮膚に触れていてもそれが必ずしも好ましくない結果になると言うことばかりではありません。着ていた方がヌード状態より快適という状況はいくらでも存在します。その場合は下着とボディとが良い関係状態になったと言えるでしょう。その意味から下着衣料のことを「インティメイト(親密な、くつろげる)・アパレル」と表現するのかもしれません。ことにブラジャーなどのファンデーション衣料は体を造形するのが目的ですから、感覚との良い関係を築くことが絶対必要です。
それには「相手へのおもてなし」意識と言うよりも、「相手への思いやり」意識が絶対に必要です。ブラジャーのパターンメーキングに深い思い遣りが必要だと言うのはこのことによるからです。

6. 運動対応器官としての機能・・良く考えてみると動物としての人間の動きの源は構造体としての骨とそれを力強く動かす筋肉だと言えるのですが人体はそれらを包んだ結果としての皮膚表面が動いていると捉えることが一般的です。例えばランニングをしている人を眺めて骨格の動きを想像する人は少なく、しなやかな皮膚の美しい動きを見ているはずです。何を言いたいのかと言えば人間の運動を考えるときには真の動きとしての骨の動きではなく、その結果としての皮膚の動きを考えており、その皮膚の動きに対応すべく衣服の設計をしていると言えましょう。正に皮膚は人間の第一の被服物であり、下着と言えどもそれは第二の被服物なのです。
     言葉を変えれば、私たちはパターンを作るために人体計測をしたり、3次元スキャナーで立体計測をしたり、それに基づいて衣服の原型を作成したりしますがこれらは人体の包装物である皮膚を主題で取り上げているということを十分に理解して行かなければなりません。人体の運動とその結果生ずる第一の被服物としての皮膚の運動とは若干の差異があるということです。


 話がやや余計なことにまで脱線してしまった嫌いがありますが、下着、ブラジャーと皮膚とはかなり強く影響し合っていると言う事になります。

 次回からはもう少し踏み込んだ皮膚とブラジャーとの関係を見て行きます。


  暖かくなってさらに作品創りに励む ラ・セレス

東京ランジェリーセミナーについてお知らせ

東京ランジェリーセミナーについて残念なお知らせです。

桜の季節


一昨年の秋から毎月継続して開催して参りました「東京ランジェリーセミナー」ですが、残念ながら当分の間、開催を中止することにいたしましたのでご案内いたします。

理由は数々ありますが、開催場所の確保が難しくなってしまったこと、参加者が少なくなってきてこれ以上の投資が厳しくなった、関西地区でのランジェリーセミナー希望者が大変多くなって来たため時間を割くことが難しくなってきた等などによるものです。

不本意なことなのでとても残念ですが、上記の点が解決に向かえばまた再開いたしますのでその際には多数のクリエイターの方々のご参加をお待ちしております。


従いまして、4月の東京ランジェリーセミナーも開催致しません。再開の場合はこのブログ等でご案内いたしますので随時ご覧頂きますよう今後とも宜しくお願いいたします。

ブラジャーの基礎 22

 4月に入りました。季節は変わって行きますが、下着の動きもその季節にしたがって変化して行きます。店頭ではそろそろ初夏物が顔を出してくる時期ですね

ヒップ部断面


今回はヒップ部の大殿筋と下着のパターンの関係です。

 「ヒップブラジャー」という商品名を聞いたことはありませんか?ヒップ部もバスト部も似たような2つの半球状の形状だからでしょうか。でもこの2つはまったく違います。バスト部は脂肪層の塊であってその半球は自由な形状に変化できるものなのですが、ヒップ部は前回の図を見ていただいても分かる通り内部は大殿筋の大きな塊になっており、その上を覆うように脂肪層がある構造です。

 これではいくら強力なパワーネットを持ってしても筋肉を変形させることは出来ないのです。それどころか直立していた大殿筋が用があって椅子に座ったような時はどうなるでしょう。お尻が突き出すような姿勢になるためヒップ部を造形するどころか逆方向に強く押し戻されてしまいます。つまりブラジャーとは着用人体部位が異なるため同じようには行かないのです。ヒップ部を「造形」するガードルも大殿筋の上に乗った脂肪層のみを造形することしか出来ないと言うことになります。

 その意味からいうと、ヒップ部に着用する下着類、例えばショーツとかガードルの設計はブラジャーのそれよりもはるかに難しいと言えるでしょう。その点を考えて3月度の東京ランジェリーセミナーでは「ランジェリーボトムのパターン」と言うテーマで具体的なパターンづくりの解説を行いました。


 それに加えてこうしたヒップ部に着用する衣類は「脚部」という自由に動き回る暴れん坊がすぐ近くにいると言う大問題も一緒に抱え込まなくてはならないと言う宿命があります。
いくら押しても動じないヒップ部と勝手に動き回る脚部とをいかになだめつつ着崩れを起こしにく、もちろんきれいなヒップシルエットに造形できる下着。
 難しいことこの上ないように思いませんか?


次回は体の表面を覆う皮膚についてです。



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