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ブラジャーの基礎 19

四肢の動きは大きく複雑と言いましたが、下着のパターンはどのようになっているのでしょう?     ブラジャーと運動


 しかしながらその一方で現実の各下着メーカーの人体の運動に関連する部位のパターンの現状はどうかとみてみますと、意外なほど簡略化されているのが普通です。
 パターンメーキングを含む製品設計には数多くの項目の検討事項があり、純粋に着用機能ばかりを追求できないという事も真実ではありますが、それにしてもあまりに簡略化されたパターンは最初のうちは理解しがたいかもしれません。特にアウターウエアのパターンを専攻とされる方々の目から見た場合にはそう感じるのではないかと思われます。

 アウターウエアのパターンをされる方は「袖原型」「パンツ原型」と言うものが存在することはご存知でしょうが、存在すると言うことはこの部分が他の部分と性格が異なった特異性を持っており、そのためにこの部分を扱う場合はその考え方を切り替えなければならないと言う理由によるためのはずです。この部分はそのパターン上の取り扱いにおいて特異性があるということです。

 にもかかわらず、インナー業界のパターンメーキングにおいて四肢の扱いについては重視されていないのが現状です。それでもまだ下肢の扱いについては「ガードル」というかなりしっかりしたつくりの補整系アイテムが存在するため「脚原型」とも呼べるようなパターンが存在しますが、上肢の方はかなりソフトなアイテムが主流であるため原型的なパターンが目に留まらない状況であるように感じています。

 四肢はその関節部を支点として全方向に回転しますが、動物としての必要動作域の関係から一般的に腹部方向には大きい可動域を持ち、背面方向には小さいのが普通です。そうした点から衣服の運動量も例えば袖部であったら前方に大きく、後方には小さく作図することが理に適っていますが実際にはそうなっていない下着パターンも多いということです。

 このブログはブラジャーのパターンを主眼においていますのでその解説は別の機会にしたいと思います。と言う訳でブラジャーは幸運にも人間の動作域の小さな部位に着用するようになっていますので設計としては楽な下着衣料であるとも言えるのです。


続きは次回へ

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ブラジャーの基礎 18

骨、骨格の話が続きます。今回は3番目の機能である骨の運動作用とブラジャーとの関係についてです。


          運動とボディ 
 図の出典は前回同様「被服のための人間因子」間壁治子先生著


 骨が直接運動をしている訳ではないという事は以前の回で記しました。ただ、筋肉が骨を動かしているとはいえ、骨は硬質の構造体であるため結果的には骨が運動していると看做しても衣服設計上では問題がないと判断されます。

 こうした前提で運動を考えた時、人体は部位によりかなりその運動量というものは変わっていると言うことに気付きます。

 例えば体幹部は前回にも記したとおり内臓を保護する肋骨群がその大まかな形状を決めています。保護している訳ですから余りに骨が動いては保護にならず、その結果、ある程度の曲がりには柔軟に対応しますが、それほど運動量は大きいとは言えません。

 一方で腕、脚の四肢は動物である機能を発揮するため非常に大きく、広い範囲の運動量が確保されています。もっとも基本的な動作とされる「歩く」「座る」「立つ」「手を挙げる」などの動作を採って見ても、体幹部の運動に比べるとその量と質において非常に大きいものとなっています。
 ということは、「ブラジャーは運動についてはかなり設計が楽な衣料であると見ることも出来ます。なぜならばそれが体幹部に装着する衣料であるからです。

 ところが下着衣料の中でも運動量の大きい部位に装着する衣料もあります。例えばショーツ、ガードル、袖付き肌着などの衣料です。これらの衣料は運動量の大きい脚部や腕部と運動量の比較的小さい体幹部とにわたって着用される衣料ですから、そこに加わるストレスは相当大きいものとなることが想像されます。
 特にボディに密着して着用される下着衣料の場合はその運動によるひずみのすべてがかかってくるため、解決のための設計には苦労が多くなるものです。そしてその解決の主役となるのはやはりパターンメーキングとなりますから、どうしてもパターンナーの役割、責任は大きく、その技量が問われることになります。


話は次回に続きます。



コラム・・・ゴースト作曲家とランジェリー・クリエイター


   もうすぐ春商戦
写真と本題とは全く関係ありません。


 最近、ゴーストライターを利用した作曲家の話題がマスコミで大きく取り上げられ、問題になっています。報道によればこれまで何年もの間にわたって自らの作品として発表された楽曲は全て別の人の手によるものだったとか。さらにそこに色々な虚偽事実があったことも発覚してワイドショーに格好の話題を提供する形になってしまっているようです。

 虚偽は悪い事に決まっていますが、ゴーストライターの力を借りていたと言うことはどうなんでしょうか?
 今回の話は有名なAさんの作曲と聞いてさすがに良い曲だと思い、CDを買ったり演奏を聴きに行っていたら、実は全然知らないBさんの作った曲だった と言うことですが、

 有名なCさんの書いた本だと聞いて買って感動していたら実は聞いたことも無いDさんが書いていた。有名なEさんの撮影した写真展だと足を運んで感激したら以前からFさんが撮影していた写真だった。有名なGさんの創った陶器と聞いて褒めちぎったら作製していたのは無名のHさんだった・・・

 世の中には事実が知られているものもまだ知られていないものもあると思いますが、こうした話は古今東西、数多くあるものです。

 自分がその作品と触れて「良かった!」と感激できたらそれが誰の作品であろうとそれで十分だと思うのですが、「有名な」が曲者で、事実が「聞いたことも無い人」だったとなると作品そのものは変化しないのに自分の気持ちは大きく変化してしまうと言うことです。


 視点を変えて私たちのアパレル業界ではどうなのでしょうか?
 有名なデザイナーの作品というので「あの人の作品を昔から着ているの」と買った後から「あのデザイナーの作品は全てサブの人がデザインしているの」
 あの有名な会社の商品だから良いものに違いないと思って購入したら企画から全部他社に丸投げしていた商品だった(アウトソーシングという洒落た呼び方があります)
 技術力があり繊細な日本人が企画した商品だからやっぱり着心地が良いと思っていたら、企画と言っても簡単なイラストを描いただけで、具体的な商品企画、パターン、商品設計、生産は全て隣の国で行われた商品だった・・・


 私は、自分の見る目をもっと磨かなければと反省すると同時に、ランジェリーのクリエイション活動についても深く考えさせられています。

ブラジャーの基礎 17

前回の骨の保護作用についての話を続けます。
肋骨上面図
今回の図は肋骨を上から見たものです。つまり頭の上から肋骨群を見下ろすとこのような形状になっているということです。



前回お話しました通り、骨の保護作用とブラジャーとの関係においてのポイントの一つ目は、

肋骨群はカゴ状でありながら均一なカゴ形状ではない

と言う点ですが、もうひとつ頭においておかなければならないのは上図の通り、

肋骨群によるカゴの水平断面は真円状ではなく楕円形状になっている」と言う点です。


この点はブラジャー設計においてどのような影響を与えているでしょうか?

ひとつには「バスト隆起の外向」という重要な点に表れています。この点については後のブラジャーのパターンメーキング基礎において詳しく説明しなければならないと思いますのでここでは説明を省略します。

二つ目の事項としてここでお話ししたい点はブラジャーのカップ部以外のパーツの設計についての注意事項です。
このパーツの設計についての注意事項の一つとして前回において、「肋骨群形状のいびつ性に対する配慮」を挙げましたが、今回の注意事項は人間の体の胸部の断面は楕円形状になっているため、
カップ部を体に固定するためのブラジャーの力はボディに均等にはかからない という点にあります。

このことは、体の断面が真円である場合よりも話を複雑化している反面、衣服としての着用時には着用感の向上に寄与しているとも言えるのです。


続きは次回です。


ブラジャーの基礎 16

前回で骨の支持作用という面でブラジャーと骨の関係の一つを記しました。
今回は続いて骨の内臓保護作用とブラジャーの関係についてです。


側面骨格図


 内臓の保護とブラジャーというのは結びつきにくいように感じられるかもしれませんが、以前の回でお話しましたとおり肋骨とブラジャーとの関係と言うことです。肋骨が内臓を保護しているため結果的に書き出しのように要約されるのですが、肋骨とブラジャーとの関係についてといえば想像がつくと思います。

 このブログでこれまで何回も記しましたが、「人間の体幹部はカゴ状になっているので、その構造を利用してブラジャーを固定している」のです。
 ですから、現状はバストが上半身上部の肋骨上に付いているからこそ、このような事が出来るのであって、もしバストがおへその辺りに付いているような場合にはブラジャーとしても別の固定方法を考えなければならないと言うことになります。今は皮膚下に肋骨と言う硬い構造体があるため活用させてもらっていますが、ウエスト部でしたら皮膚下に硬いものが無いのでどのように固定したらよいかについてはかなりの難問になりそうですね。


 さて本題に戻って、肋骨群のカゴ型を利用して固定しているということ自体は誤りではないものの、肋骨群を細かく見ると普通の単純な円筒状ではない事が分かります。今回の骨格図(出典は同じく間壁治子先生著「被服のための人間因子」)は側面から肋骨群を見た時どのような形状になっているかを説明するために掲示したのですが、体の前面部は外側にカーブを描いた釣鐘を側面から見たような形状になっているのに対して、背面部は底部に向かってえぐられているような形状になっているのが分かりますか。
 つまり肋骨群の形状は円筒型とか釣鐘状とかの周囲がすべて同様の曲面ではなく、前身側と後身側とで大きく異なっていると言う事実です。

 それは肋骨群がイレギュラーな形をしているというよりも、肋骨は脊髄から枝状に出ているような構造になっているためです。脊髄は人間の背面に近いところにあって、直立時には横から見るとゆるやかなS字カーブを描くような形をしています。そのため脊髄に付属した肋骨群も下になるほど、えぐれたようなカゴ状になっているのですね。

 それがブラジャーにどういう影響を与えているのかというと、単なる円筒的なカゴ状だったらブラジャーの固定の仕方は横から見て水平状で良いのですが、えぐれているため水平に固定しようとすると背面において無理がかかる、言葉を換えて言えばズレやすいということになってしまうのです。



さらに話が次回に続きます。

ブラジャーの基礎 15

具体的に骨(骨格)と下着のパターンの上での関係を見てみましょう。
前回の骨格図も参照にして下さい。


       背肩紐位置


復習ですが、人間の体の骨(骨格)の働きのうち次の3点に注目して話を進めてきました。

① 身体の支柱となる支持作用
② 内臓を保護する保護作用
③ 筋肉により運動を行う運動作用

 そして①の支持作用については、パターンメーキングに反映される事として人体(ボディ)の絶対的大きさ、相対的位置関係などが決まってしまい、大枠としての衣服の原型が固まり始めるとお話しましたが、下着との関係で特にブラジャーに関係して理解していただき易い点を挙げてみると、私がすぐに思い当たるのは「肩紐(ストラップ)」の長さや位置関係の点です。

 ブラジャーの原型を創る上で重要なポイントの一つとして「肩紐の設定」があります。ブラジャーの構造はバスト部を造形するカップ部とそれを支え、全体を保持する「土台部」、そして「肩紐部」と言う具合に機能を分けて考えることが出来ますが、つまりブラジャーの「肩紐」は単なる吊り紐ではなく、ブラジャー全体を構成する柱の一つなのです。
 そうした重要なパーツをどのように設計するかと言うことはカップ部の設計に劣らぬくらい重要なことなのですが、その設計のポイントとしては上でも記しましたが、「長さ」と「位置」との2点があります。

 ここでは分かりやすい例として、後肩紐の取り付け位置について触れてみましょう。

 ブラジャーを着けている人を後ろから見るとブラジャーの後身頃の上辺から上方の肩線に向かって2本の肩紐が伸びていると言うのが普通ですが、この肩紐の後身側の位置はどこにあるのが適正位置かと言いますと、最上部の肩線を通る箇所で言えばネックポイントとショルダーポイントの中点を通るのが標準位置となります。

 一方の最下部の後身頃に取り付けられている辺りでの適正位置としては肩甲骨の下端が拠り所となり、その左右間巾はアンダーバスト70cmの人の場合で17.0cmが基準です。


 これらは人体を構成する骨の構造体としての骨格を基本にしています。
 このように骨は人間の体格を形作り、それに従って衣服のパターン原型は創られて行くのです。



長くなりましたので続きは次回に。
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