ブラジャーの基礎 44

かなりハードだった5月の東京セミナーもなんとか終了しました。どうしてか腰を痛めてしまって歳のせいかも?

電気通信大学


  前回で原型の話はこれで終わりと書きましたがその後いろいろとパターン作成をしたり、パターンについて考えているうちにひとつの考えに行き当たりました。
 現在パターンナーとしてワークされている方々は「アパレルの製図方法としては平面製図法か立体裁断法かの2つの方法に大別される」と認識されていると思います。ただ、筆者もパターン研究家ではありませんのでこれ以外にも方法が存在するのかも知れませんが一般には上記の2方法が代表ではないでしょうか。
 これら2つの方法にはそれぞれ特徴があり、その特徴がうまく活かされる服種、デザイン意図に適宜選択採用されている流れになっていると言えると思います。

 ブラジャーやランジェリー衣料、下着類の業界においてはどちらが多用されていると思いますか?下着業界ではほとんどが「平面製図」の方法でパターンメーキングを行っているようです。その理由としては服飾造形の目的というものが布地のドレープ感、フレアー感などの表現力を活かすなどということがなく、純粋に体へのフィットのみを考えて来たという歴史によるものでしょう。
 実際に筆者はブラジャーの製図を平面製図のみで日々作図をしていますし、下着業界内でパターンを扱っているいろいろな人に話を聞いた時でも「うちは立体裁断でやっている」というようなことを聞いたことがありません。ただ、昨今のデコレーション優先のブラジャー(デコブラ)などの製図においてはブラジャーの基本構造は平面製図で作図したものを使いつつ、その上に「被せる」装飾のための生地を立体裁断の考え方で処理する場合も増えてきましたが。


  いずれにしても「下着の作図法は平面製図」という公式がほぼ明確に通用してきたと思います。ところが筆者はこれまで自分で書いてきたブラジャー原型の考え方をまとめてきた中でその公式にやや迷いを感じています。「果たしてブラジャーのパターンメーキングは平面製図法に頼っていて良いのだろうか?」これまでずっと操作してきた平面製図法は慣れていることもあるし、他の人の製図を見る場合も分かりやすいものです。第一、平面製図法を変更しなければならないという理由は何でしょうか?

 それは人体という立体物を扱う上において、平面でそれを扱う時にはかなり無理をしなければならない場合が多いなぁと感じるようになってきたからです。自分自身だけで作図する場合はこれまでの経験と勘で立体を平面に置き換えて作図することはそれほど問題とは感じませんでした。
 ところが筆者の行っているランジェリーセミナーでパターンメーキングの手法をこれからランジェリーパターンの路に入ろうとしている人に解説しようとすると頭の中でその矛盾性が湧き出してきます。この立体表現を平面で説明するには無理があるのではないかと。

 そういうわけで今月から大阪電気通信大学の聴講生となり、3DCADの理論を教えてもらうことを始めました。
 果たしてこの技術がもやっとした迷いを晴らしてくれるのかどうか?また後日報告いたします。


  3DCADはとっても楽しい!
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ブラジャーの基礎 43

ジェッソが乾くまでの間、元に戻ってブラジャーのパターンの話です。
さあそろそろブラジャーの原型とはどういうものであるべきかの結論に話を進めたいと思います。

ランジェリーセミナー 


 La CeRES


 田中千代先生は「新田中千代服飾事典」の「原型」の項においてさらに次のようなすばらしい見解を述べられています。


 「原型を作るためには人体測定を元に立体的な人体を平面に置き換える、それは人体の表皮をはがしてそのまま展開したような形であって、このゆとりのまったく無い展開図が本当の意味の原型なのである。」

 まさにその通りだと思います。ファンデーションメーカーで育った方々ならばきっとその通りと思われることでしょう。

 ただ、田中先生の場合このような理論のみにこだわるにとどまらず、さらに次のような分かりやすい解説を加えられているのがとても納得できる点と感じました。すなわち

 「しかし一般に衣服には空間というものを必要とする場合が普通であるため、体寸法に適度なゆるみを加えて作図したものを原型と言い慣わしている。つまり原型には人体を正確にコピーした本当の意味での原型と、製作の便宜上ゆとりを加えた基礎型紙とも言うべき原型の2種が考えられる。」


 このように解説していただくと現状において「原型」という言葉が広く使われていますが、下着業界に住む者にとっては非常に安心した感覚に浸れたと感じるのは筆者だけでしょうか。



 これでほぼお分かりのことと思いますが、ブラジャーの原型は明らかに前者のゆとりを付ける前の人体そのものを元にした製図であり、それは人体(ボディ)の展開図である と捉えて良いということになるでしょう。


 ところが大筋ではこの解説に納得同意しつつ、筆者のメゾンでブラジャー原型として扱っている製図はここに一味、二味の工夫を加えて原型としています。工夫が必要な理由は「ブラジャーなどのファンデーション衣服は人体にうまくフィットするのが目的なのではなく、人体を造形することによって美しいシルエットを創るため」だからです。これでお分かりでしょう。ですからより良いブラジャー、ファンデーション原型を創るためには人体計測のみで留まることなく、体質、肉質計測までも含めたトータルな人体把握が不可欠といえるのです。
 非常に難しい課題ながら、この理想に少しでも近づいて行くために私たちは原型の改良に努めて行かなければならないと言えましょう。

 

 

長々と原型論について書いて来ましたがこの話題については今回で終了とさせていただきます。




ブラジャーの原型を創りましょう!

ブラジャーの基礎 42

ブラジャーのパターンメーキングにおいて「原型」というものをどう考えたら良いのか?田中千代先生の解説を礎に考察して参りたいと思います。

ランジェリーセミナー


 今回も前回同様 田中千代先生著の「新田中千代服飾事典」内の「原型は人間という土台に従い、より適切でより美しいデザインの服をつくるもととなり、ガイドであるということができる」という箇所を元に「ブラジャー原型」を考えてみると、アウターウエアの原型が人体と衣服との間のゆとりを配慮した時に自由な衣服表現への飛翔を果たし得たのに対して、ブラジャーなどの下着衣料は一般にはゆとり量という概念を使用しないため、上記の田中千代先生の解説とは若干異なる配慮が必要となります。
 どうして配慮が必要なのかと言えば、衣服と言うものは歴史的に見ても「美」、「着飾る」という要素が必ず存在し続けてきたし、ことに現代においては「ファッション性」と表現される感覚的要素の比重が増大しつつあるからです。


 ところがブラジャーをはじめとする下着衣料は過去から現在に至るまでの間、ずっと「人体」というものにこだわり続けて来ました。それ故に「ゆとり」という概念が発生する余地が無かったため、人体を基にしてより美しい、人体とは別物となる衣服というものへと飛び立つことが難しかったのではないでしょうか。つまり人体=ボディとは別物の新しく美しい創造物を志向するのではなく、「人体そのものが美しいのだ」という具合に内に向かって創造を進めて来たのかもしれません。

 このような仮定を可とするならば、下着衣料、ブラジャーの原型とはより深く人体=ボディそのものの美を突き詰め、ある時にはヌード状態の美しさを表現し、ある時には造形したシルエットの美しさを表現する如くの製図であり、人体とは別物の物体(アウターウエア)を具現化するための製図ではなくして、人体=ボディを直接デザインする存在物のための製図でありガイドであると言えるのではないでしょうか。

忙しすぎた年初の3ケ月が終わろうとしています。
ハードに走りすぎた嫌いのある原型論からちょっと離れて、次回からはボディ(人台)修理日記でお目にかかりたいと思っています。


原型を考えるのは面白い! La CeRES

ブラジャーの基礎 41

服飾における原型についてさらに話を進めて行きます。

ランジェリーセミナー



「原型は人間という土台に従い、より適切でより美しいデザインの服をつくるもととなり、ガイドであるということができる」(田中千代先生著 新田中千代服飾事典)


前回の解説をさらに推し進めた形になっているこの文章では、原型は人体という原点からスタートして「より適切でより美しいデザイン」をつくるために存在するものであると言っておられます。
つまりスタートが人体であるというは納得してもらったにしても、それを基にしてより良いデザインを作るためのものが原型であるのだと。

ですからいつまででも人体に固執し続けるのではなく、目標はより良いデザインの衣服を作ることであるから、「人体、体型からの脱離」が適当なタイミングで必要であるということなのだと思います。

問題となるのは「いつが適当なタイミングであるのか?」ということですが、この観点からアウターウエアで一般的に採用されている様々な「原型」を眺めてみるとどれも今回の解説文の趣旨を活かしていると感じます。
上記の「人体からの脱離」については具体的には「人体と衣服間に存在するゆとりへの配慮」が大きなポイントです。つまりアウターウエアの原型作成過程においては「ゆとり量を適切に設定」することによって人体の形状や寸法といった物理的側面から離脱し、独立した存在としての「衣服」というものの主として視覚的な存在美とでもいうべきものを演出せんがためのトライアルを行ない始めるということになるのでしょう。
そしてその努力が結実化し、具体化したものが(アウターウエアの)「原型」となっていると言えるのではないでしょうか。


それではインナーウエア、下着衣料の原型はどうでしょう。インナーウエア、下着衣料もいろいろな種類があって一まとめにその原型の性格について論じることはできませんが、ここではこのブログの主題である「ブラジャー衣料」の原型についての考察を次回から申し述べて行きたいと思います。


    一緒に原型を考えましょう! 
La CeRES

ブラジャーの基礎 40

「服飾における原型とは・・・」 それでは衣服のパターンメーキング分野における「原型」というものについて話を進めて参りましょう。

ランジェリーセミナー


田中千代先生はこのように解説しておられます。

 「服飾における原型とは人体と言うオリジナルなものについて、それをコピーしたもととなる型のものの事を指す。従って原型はあくまでも具体的な人間と言うものが存在して初めて考えられるものであって、空想的に作られるものでは決して無い」(新田中千代服飾事典)

 後半部分は特に際立って印象的な文章になっています。
「人間、人体」こそがあらゆる衣服原型のスタート地点であって、無状態から衣服の外形を作り出すことは無意味であるということです。現代において人体を無視して衣服パターンを作ると言うことはまず無いでしょうが、その意識の程度レベルの面ではどうでしょう。

 ことにわれわれが扱う下着類ではその対象となる人体の存在が極めて大きな存在になるのにもかかわらず、相変わらず見た目の装飾性やファンデーション下着類の造形機能力に甘えた小手先の商品開発や販促ばかりが目に付く現状にはとても残念に思います。
 そしてそれらの結果が下着業界全体の業績状況、世界のなかの日本下着の評価に影響を与えているのではと思わざるを得ません。


 みんなで原型を考えましょう! 
 La CeRES


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